東京地方裁判所 平成10年(ワ)15721号 判決 1999年8月26日
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告会社は、原告に対し、別紙株券の表示<略>の株券計五八五枚(以下、本件株券、という)を引き渡せ。
二 原告と被告乙田との間において、本件株券が原告の所有に属することを、原告と被告乙山との間において、別紙株券の表示<略>の株券の内、さくら銀行株、大和銀行株計三〇九枚が原告の所有に属することをそれぞれ確認する。
第二 事案の概要
一 (争いのない事実等)
1 原告は本件株券をもと所有していた。
2 原告は、平成一〇年一月九日、本件株券を何者かに窃取された。(甲四)
3 被告会社は、本件株券を占有している。
4 原告は、本件株券の所有権に基づいて本件株券の引渡しと所有権の確認を求めている。
被告らは、本件株券は、被告乙田が訴外C(以下、C、という)に六〇〇〇万円を貸付、その代物弁済として取得したものであるとして、善意取得の抗弁を主張するところ、原告は右取得原因事実を争うとともに、仮に右取得原因事実が存在したとしても、Cは本件株券を所有しておらず、被告乙田はそのことについて悪意または重過失があったとして、善意取得を争っている。また、被告会社は、予備的に留置権の抗弁を主張する。
二 (争点)
本件の主たる争点は、右善意取得の成否である。
第三 争点に対する判断
一 <証拠略>によれば、平成一〇年一月一四日、被告乙田は、Cに対し、六〇〇〇万円を本件株券で代物弁済してもらうとの約定で、貸し付けることを合意し、同月一六日に右六〇〇〇万円の貸付を実行し、その場で代物弁済として本件株券を受領したことが認められる。
右認定を覆すに足りる証拠はない。
二 被告乙田が右一月一六日に本件株券を取得した際、仮にCが本件株券を所有していなかったとしてもこのことについて悪意または重過失であったことを認めるに足りる証拠はない。
三 そうすると、被告らの善意取得の抗弁には理由がある。
(裁判官 黒津英明)
(別紙)株券の表示<略>